A 【納税】所得拡大促進税制を使う
B 【納めない】使わない
で、どっちがいいの?
社長とじっくりと話し合いましょう。
しかし・・・
社長に説明しても「どっちが良いか分からない」と仰る。
そんな時は決まって税理士に判断を求められます。
毎月、または数ヶ月おきに見てきている顧問先様。
どちらかが正解!
ということであればお答えするのは簡単です。
しかし、現実問題としてなんともいえないというケースも多い。
税理士という職業
このような場合にベターな方向、自分の考えを案内・示すことが重要な仕事になります。
わたしは仕事上では「どちらでも良いのではないですか?」というフレーズを口に出さないよう心掛けています。※プライベートでは別です
所得拡大促進税制を使える事業年度に利益がゼロ
仮にこのような法人だったとします。
・決算修正前の最終利益は0万円
・当期中【消耗品費】計上している中に「少額減価償却資産」に該当するものが300万円あり
(少額〜に拘らず調整できるものが300万円あり、と理解してもらってOKです)
以上の条件であれば特段の事情(金融機関対策など)がなければそのまま決算を締めても良いでしょう。当期はしかるべき投資をして税金を払わずに済んだ、メデタシメデタシ。(利益はもう少し欲しいです)
判断はそこまで難しくありません。
納税額はゼロ、でおしまい。
(均等割などを省略)
所得拡大促進税制を使える事業年度に利益をあえて出す
それではもう一点条件を付け加えます。
・決算修正前の最終利益は0万円
・当期中【消耗品費】計上している中に「少額減価償却資産」に該当するものが300万円あり
・前記よりスタッフを増員し、その他諸条件を満たしたため所得拡大促進税制を使えることが判明。増加額に15%を乗じたら最大50万円まで控除(減税)可能であるとします ※法人税率は便宜上20%とする
如何でしょうか。
消耗品費に計上している「少額減価償却資産」を一旦、資産計上し税引前利益を300万円とする。そのうえで所得拡大促進税制を使いたくなりませんか?
税理士 「社長!今回の決算では前期より給与を増やして色んな条件を満たしているので税額控除を受けることが出来ますよ!使わないと勿体無いです!」
社長 「なに?税額控除なんて可能なの?おっしゃ、それ使ってくれよ」
税理士 「かしこまりました」
この場合の法人税を簡単に計算すると、
+ 税引前利益300万円×20%=60万円
▲ −50万円・・・とはならならいで、
▲ 法人税60万円のうち20%までが限度となり、
控除出来るのは−12万円まで
=60万円▲12万円=納税額は48万円まで膨れ上がります。
社長 「オイ、税理士!最初の決算案では納税がゼロやったのに、なんで法人税を48万円も払わんといかんのよ!税額控除はどこへ消えよった(怒)!」
税理士 「いえいえ社長、本来は60万円のところ、12万円も控除しての48万円なんです!得してますよ!」
社長 「アホいえ!最初の案では税金ゼロ、で、今は48万円やぞ!?」
いやいや・・・なんとも面倒くさい展開となりました。
来期の話も説明すること、聞くこと
以上、典型的な税理士の説明不足
所得拡大促進税制を使うため、損金計上していたものを一旦資産計上する。
その資産計上したものは来期以降の損金になります。
※ モノによりけりですが、全額を来期の一事業年度で損金計上出来るかは微妙
社長 「よし!それでは複数年を総額で考えた場合、税金が安くなるのでやっぱり今回は納めてみるか!」
本来であればゼロで行くことも出来ましたが、社長はあえて48万円を先払いする道を選択しました。
さて、すったもんだがありましたが、
それでは決算を締めて、
申告書を清書して、
こちらの請求書も用意して、
社長へ申告書をお返ししましょ。
(その申告書をお返ししながら)来期見通しとして、
こんな話が出てきた場合はどうしましょう。
社長「いや、実はよ、来月で○社との取引が終わるんよ、そこを補填する売上をすぐに見つけるのは厳しいかもしれん、だから次(の期は)赤字を覚悟せんといかんわ」
あらま(汗)
これでは一旦資産計上した分を次の期に損金計上しても、赤字見通しであれば納税額はゼロのまま。節税にも何にもなりません。
そして、手元預金も寂しいため当座の資金として銀行へ借り入れを申し込むという。
つい先程、48万円もの法人税を納めてしまったのが痛い。
これは税理士のヒアリング不足からくる不幸。
今回のテーマの(わたしの)答えは、
次期見通しを決算作業中に確認したうえで、所得拡大促進税制は惜しいですが使わない。
この状況であれば無理をして税額控除を受けるべきではありませんでした。
本当に一寸先は闇、ならぬ一年先は闇。
なにが起こるか分かりません。
納税が生じてしまう税額控除
適用時には慎重な判断を。
本当の正解は?
決算だけのお付き合いではないのです。
スタッフを増員する、しないは都度確認しています。
許されるのであれば1年前の決算時に戻りましょう。
そして、
スタッフを増員すると聞いた、
そうか所得拡大促進税制を適用出来るかもしれない、
給与はいくらぐらいの人を何名増員?
人件費総額はこのくらいの予想、
おぉ税額控除の限度額がこれくらいあるぞ、
ん、まてよ、社長の役員報酬をいまのままだと最終利益がゼロになりそうだ、
からの、
税理士 「社長、こうこうこうですから、この一年だけ役員報酬を○万円ほど下げてみませんか?決して後ろめたい減額ではなく、戦略的な変更です!」
と、法人の最終利益を大きく計上し、所得拡大促進税制をフル控除。
うん、これがやりたいから
年に一回だけのお付き合い・・・
わたしには出来ないのです。